へんてこブログ

適当に書く予定

【節分】恵方巻き担当者仁義なき戦い

冬ってイベントごと多くて楽しいですよね。クリスマス、大晦日、お正月…20歳の人は成人式だってありますし…

当然、イベントが多い冬は小売業も繁忙期として日々数字を追いかけけて仕事をしている訳ですが、総菜担当者にとって一番の山場はどのイベントか分かりますか?まあ、題名からして察しくれる方が多いと思いますがもちろん「節分」です。スーパーの惣菜担当者に正社員が置かれる理由の9割がこの節分を乗り切るためだと言っても過言ではないです(偏見)そんな悲しい惣菜担当者の節分を乗り越えるための仁義なき戦いを振り返ってみましょう。

 

あ、この記事はなんのプロットもなくただ思いついたことを偏見まじりでつらつら書いてるだけなのであしからず…

 

  • もうすでに戦いは始まっている

節分って消費者からすれば、その日だけのイベントってだけでその日以外は特になにも意識はしないと思うが担当者はそうはいかない。もうすでに次の節分に向けてある程度考えています。

恵方巻きの製造・値付け・品出しなどの工程は全て人力、つまり人手がものを言う。この節分を終えた今日で担当者がまず考えていることは「今年製造の応援に来てくれた○○さんと××さんはかなり効率良く製造してくれたから来年はもっと量の多い商品を頼もう」まずこれ。

巷ではSDGsだの廃棄だの20年前はなかった文化だの言われているが、節分当日の担当者の頭の中はとにかく昼と夕方のピークの売り場に恵方巻き出し切りたいとしか考えていない。製造を任せた人が思っていたより手が遅ければ店出しも遅れてピークが過ぎた時に売場に出てしまう。そうすれば、値引きや廃棄に繋がって計画した売上がとれない。だから今年の状況を把握して来年の製造をもっと効率良くしようと考えている。もし節分終わりに惣菜担当者から「来年もよろしくね〜」って言われた他部門の応援者は来年は覚悟してね?(ほんとにお願いします)

ちなみに、2月3月で冬商戦がこんなにもヤバい仕事だったのかと戦慄する若手社員はこの時期に退職届出してる。たまに気が狂って社内規定を超える金髪にしたりどっかの山奥に逃亡して警察に保護されたり大型冷蔵庫内で放心状態になる人もいるとか(自分は実際に見たことはないけど)

  • 秋頃には計画しはじめる

夏が過ぎて肌寒くなってきたこの時期には本格的な恵方巻きに向けての計画がはじまる。この頃から担当者は気分が落ち込む。そらそうだよ、クリスマス年末年始が目の前に控えてるのにその先の節分について会議で話されるわけだもん。

ちなみに、異動で店舗が変わった時は大体この時期に前任者の反省書をパソコンのどっかのファイルからサルベージする必要がある。しっかりとした前任者だと定量的な事を踏まえて書いてくれてるけどたまに「今年はよく売れた(小並感)」みたいな反省書が出てきたりもする(絶望)

  • なんで自分だけが忙しいんだ?な1月

正月は休業しているスーパーもあるが中には営業しているスーパーもあるので一概には言えないが1月は正月除いたら基本売れる日はない。だから、多くの従業員は冬商戦の緊張が切れて笑顔が戻ってくるのだが惣菜担当者は逆に顔が真っ青になる。

1月にはもう発注と製造計画、作業場計画、資材・備品確認などとにかく臨戦態勢に入る。他の社員がお先に〜って退社したあとも黙々と準備をしている悲しい生き物が寿司作業場にいるのだ…

この時期はストレスも半端じゃないのでかなりピリピリしている。頭からツノ生えて鬼になってんじゃないかと自分でも思う時あるし、鬼なってたら喜んで外出て行って節分から逃れたい。早く俺に豆を撒けっ!

  • 節分前日

原料不足が見つかる。担当者は死ぬ。

  • 節分当日

当日はもう実行するしかないのでドーパミンドバドバ出しながら事にあたる。とにかく巻いて巻いて出して出しての繰り返し。

お客さま「この商品まだ出ませんか?」

担当者「うるせえ!今作ってるんじゃ。あとその商品なら予約しろや!(申し訳ございません。ただいま製造中でして、もうしばらくお待ちください)」

節分当日は当日に無茶なこと言う人が鬼に見えてくる。豆撒いたろか?

昼までの製造進捗を見て「あ、これ想定より巻けてるじゃん。いけるぞ」って思ってるけど、午後から製造者の疲れからか作業スピードが落ちて結局計画通りには進まないことが多い。

夜になれば異常な寿司の売上構成比見たあとに自分用に予約したよくわからん高単価の恵方巻きを持ち帰って節分を終える。

そして来年の節分に向けてまた戦いがはじまる

 

いや、ホントに恵方巻きはキツい。ぶっちゃけ現場サイドからしたらやりたくないイベントぶっちぎり1位だと思ってる。長期間の準備を経て、当日は奴隷のように仕事して後日には恵方巻き廃棄問題で叩かれて…と本当に福が無い。世の中の福が一定量しか存在し得ないものだとしたら恵方巻きに関わる担当者の福が売られてる気がしてならない。とにかく疲れるイベントな訳なんですよ。

じゃあ、恵方巻きなんて辞めれば?って思われそうだけど、そうはいかない。まず、恵方巻きはかなり売上に貢献してくれる重大イベントだからです。2月は基本28日しかなくて他の月と比べると2〜3日ほど少ない。小売業にとっては営業日数が売上に影響しているので2月は基本売上は少なくなる。しかし、節分というイベントでこの2〜3日分を全てではないにしろカバーはできる。もっと言えば大手小売業の決算月は2月が多い。ラストスパートをかけるにもこのイベントは辞められない。(バレンタインデーにも力入れる理由大半これじゃない?)

廃棄の象徴恵方巻きはやめろ!問題ですが、こんなにも準備してきたのに廃棄で終われせて納得する担当者はいないでしょ。廃棄ロスはコンビニは分からないけどスーパーはそのままロスに直結するので廃棄はない方が良いに決まってる。1円でも多くお金に変えたい。それでも廃棄が大量に出ている店舗があるとすればそれは担当者の計画がかなり甘いと言わざるを得ない。反省しましょう。

20年前にはないイベントだの言われるが、それでもなお恵方巻きが売れるのは需要があるから。特にコロナ禍での内食需要の大きさはよくわかっているはず。恵方巻きは子どもから高齢者まで楽しめるように多くの種類や量を設定する小売店が多い。夕方の献立考えなくてもよいのは主婦にとっても助かるイベントでもあるわけで…

だからこそ、恵方巻きはここまで成長してきたと思っているが同時に食品ロスについても浮き彫りになってきたのは事実。でも、食品ロスを考えるのであれば正確に把握していかないといけないと私はそう思っています。

news.yahoo.co.jp

ここ数年は食品ロス問題のジャーナリストが恵方巻きを中心に食品ロスについて記事をよく出してます。概ね、記事内容には異論はありませんし、こうして業界外部からの指摘を受けてもらえるのも良いでしょう。しかし、正確に食品ロスを把握するには細かい部分で修正してもらいたいところもある。

2019年に、大手スーパー営業部長に取材した際「例年だと、恵方巻の廃棄率は20%から30%くらい。他の惣菜に比べて、特に多いわけではない。

例年の恵方巻きの廃棄率は20~30%とこの記事には出ているが、これは本当なのだろうか?確かにこの大手スーパーの例年の廃棄率がこのくらいある可能性もあるが、その後の他の惣菜に比べて特に多いわけではないと言う部分がどうも引っかかる。

www.j-sosm.jp

こちらのサイトには2019年のスーパーマーケット年次統計調査報告書のデータを元にした商品カテゴリー別のロス率が載っている。このロス率というのは廃棄もそうだが、値引きも含まれるもので、惣菜は平均10.1%のロス率となっている。調査期間は6月〜8月なのでここに恵方巻きは含まれていないが、大体年間通してもロス率はこの程度ではある。

これと比べると廃棄率20〜30%が普通とは到底思えない。10本作って8本売れて2本廃棄で廃棄率25%と考えると、1,500本製造した店舗は375本廃棄したことになる。これはあまりにも多すぎる。おそらくだが、これは廃棄率ではなくてロス率と勘違いしている可能性はある。ちなみに意外と思われそうだが、節分は平日より土日の方が需要は少ない。2018年と2019年は土曜と日曜が節分に当たるので平日の節分と比べるとロス率は高くなる。平日の場合、夕方のピークは20時などかなり遅い時間まであるのに対して、土日は夕方のピークが短く、どちらかと言えばお昼に買い物する客が多い。恵方巻きの午前までの製造数は正直しれているレベルなので土日の場合はどうしてもピークに合わせて供給が追いついていないところが多い。これがロスにつながっている。次に土日に節分がくるのが2024年の土曜日。ここが焦点になると私は思っている。

小売業者は2024年に廃棄を多くだせば確実に炎上する。絶対する。だから、今のうちに売上もとって尚且つ廃棄を含めたロス率を減らすなにかしらの方法を考えなければならない。案としては、具材のキット化(冷凍芯化)、長持ちする原料を多くして計画より下回った売上になる場合に後日別商品の原料として使う、販売期限を長くするなどできるうちに手を打ってもらいたい。くれぐれも担当者の出勤時間をクッソ早くして昼のピークに間に合わせるだけで終わらせないでほしい。そのときは本社に豆撒きに行きます。

チェーンストア理論から見る転売屋の儲け方

ここ数年、Twitterを漁っているとフリマアプリなどのネットを介する市場での悪質な転売についてのツイートをよく見かけるようになった。特によく見かけるのが、任天堂から発売された家庭用ゲーム機Switchの高額転売などで、とにかく今話題の商品をとんでもないボッタクリ価格で転売している件が多い。ただ、この転売に関していつも「儲かってるの?」という疑問がある。

そこで、この悪質な転売ビジネスをチェーンストア理論から分析して効率的に儲かっているのかを考察していく。

 

そもそもチェーンストアとは1店舗では到底提供できないサービスを店舗を連鎖して増やすことで可能にし、国民の生活を豊かにすることを意味している。そのために、作業を科学的に分析し、標準化された作業を行い、なるべく例外処理を減らして効率的に運営していく経営が必要となってくる。これがチェーンストア理論の大前提となる。

他方で、悪質な転売屋を定義するならば、定価販売されている商品をほぼ独占的に買い取って高値で販売することで利潤の最大化を図ることとしよう。またこのような転売ビジネスを調べていくと副業として流行っているようでなんなら主婦のこづかい稼ぎみたいな紹介もあってかなり驚いた。要するに、悪質な転売屋は私腹を肥やすための自己中心的なやり口だと言ってもよいだろう。

 

さて、チェーンストアでも転売屋でも利潤を最大化させるにはまずは売上なければ利益はでない。そこで、効率よく売上をとっているかという指標のひとつ「商品回転率」の面から分析してみる。

 

商品回転率を数式で表すと「売上原価/平均原価棚卸額」で表すことができる。この商品回転率を平たく言えば、在庫として存在する商品を年間(月間)で何回転させているかという指標のこと。つまり、商品回転率が高ければ高いほど在庫の商品の入れ替わりが激しくどんどん売れていると考えられる。

チェーンストア理論ではこの商品回転率をどのように考えているか。先にも書いたように回転率が高ければ高いほど売れていると考えられるので高回転であれば良いと考えがちだが一概にそうとも言えない。その理由として、高回転であるとその分の商品の補充回数が増えてしまい商品管理面でのコストが増加するのでかえって効率的でないからだ。そこで商品回転率はチェーンストアの各フォーマット(食品スーパーやドラッグストア、家電などの分類)の平均値近くの数値で回転させることが効率的であると言われている。

一方、転売屋はチェーンストアよりもかなりの高回転な商品回転を求められると推測できる。もし、副業で転売をはじめたとした場合、在庫スペースを確保しなければならないが、チェーンストアほどバックヤードを確保できないのは容易に想像がつく。つまり、家の中の限られた狭いスペースに在庫を抱えることとなるはずだ。そのような状況で利潤を最大化させるには、この限られたスペースで商品を高回転させなければならない。商品管理面で作業負担が増大してしまい副業ではじめたのにかなりの体力を消耗してしまうことになるはずだ。これでは効率的な運営は難しい。

 

商品回転率から分析したところで、今度はこの適正な商品回転率を維持するために売れる商品の構成を考えなければならないので「商品構成」の面から分析してみる。

 

商品を分類すると売れ筋商品など長期的に売れる定番商品や今流行っているホット商品もあれば、全く売れない死に筋商品などがある。(他にも分類方法はあるのでここでは割愛)

チェーンストア理論では商品構成をユニットコントロールと呼ばれる手法で売れ筋商品やホット商品などの売れる商品を陳列量に比例させることで売上・利潤を最大化させていく。そのため死に筋商品などの売れない商品は撲滅させていき、その分の棚枠を空けていかなければユニットコントロールはうまく機能しなくなり回転率も悪化させてしまう恐れがある。売れない商品は在庫として持つだけ無駄になるのでさっさと売り飛ばしてしまうのが得策となる。さらに、この死に筋商品というのは、需要以上に在庫として持っている売れ筋商品も死に筋商品とも捉えられている。

転売屋はどのような商品構成をしているのだろうか。転売屋の主な商品は、定価よりも高額で売れる商品を中心に構成される。つまりは、流行りの商品、ホット商品が大半となるはずだ。転売屋はこのホット商品を独占するためにいろいろな店舗をまわり大量に購入し高額で転売していくこととなる。しかし、このホット商品というのは大抵はすぐに陳腐化してしまう。例えば、数年前に流行った透明色の飲料がそれにあたる。流行った時は爆発的に売れるが、今、透明色の飲料を当時と同じ陳列量で販売しても売上はあがらないだろう。つい最近ではタピオカ、直近ではマリトッツォやコーヒー抹茶ラテあたりがホット商品と言えるがその大半は衰退していくこととなる。さて、このホット商品、流行りが終わったらどうなるか想像しやすいでしょう。そう、ホット商品は一気に死に筋商品になりうるのだ。需要以上に在庫として持つ商品が死に筋商品となるのはこういうことが理由だ。例を挙げるならば、冒頭にも触れた任天堂Switchなんかは確かにホット商品ではあったが、今秋に新型が発売されることで一気に旧型Switchが陳腐化してしまっている。Twitterでは悪質な転売屋がこの陳腐化したSwitchをどうにかはかそうとして10台まとめ売りをしてるフリマ画像が出回った。転売は商品構成にも問題がありやはり効率的な運営は難しいように思える。

さて、本来死に筋商品が在庫としてあった場合、普通ならすぐにでも消し去りたいので値下げをするなどして売り飛ばすのが基本だが、どうやら転売屋たちはどうしても定価価格付近で売ろうと頑張っているように見受けられる。余談だが、これはおそらく、仕入れた代金を取り戻そうとする損失回避行動が働いていると考えられる。この損失回避行動とは、行動経済学プロスペクト理論によると、同じ大きさの利得と損失がある場合損失が利得よりも強く評価される事が影響していると言われている。

 

転売屋は商品を仕入れるために先に代金を支払い、その損失分を後から高額転売により補いそこで得た利益を元にして次の商品を仕入れる訳だが、これでは仕入スピードには限界が来てしまう。一方でチェーンストア(特に食品などを扱う小売フォーマット)は仕入スピードを早くできる「回転差資金」を利用している。最後にこの「回転差資金」の面から分析してみる。

 

商品を仕入れたとしてもチェーンストアの場合、直ちに支払うのではなく買掛金として一定の支払サイト(期間)がある。しかし手元には仕入れた商品が存在するのでその商品の買掛金支払日よりも前に売上げてしまえば現金化することができる。この現金のことを回転差資金と呼ぶ。この回転差資金は、支払サイトが長く逆に毎日現金等で売上がとれるBtoC企業の特徴的な資金調達方法で、コストをかけることなく調達することが可能な使わない手はない資金だ。多くの食品スーパーはこの回転差資金を利用してスピーディな仕入を行ったり、または店舗開発資金に充てている。しかし、これができるのは回転差資金がプラスであること、つまり出ていくキャッシュよりも入ってくるキャッシュが多くなければ使えない手段でもある。

回転差資金がマイナスになるチェーンストアのフォーマットはいくつかあるが、その一つに中古販売・リサイクルのフォーマットが代表的であろう。これは単純な話で、中古販売・リサイクルの仕入は買取カウンターでの現金取引が多いのでいくら売上ても買取カウンターでの現金取引を上回る販売資産回転を行わなければならないがどうやら大手の中古販売・リサイクルチェーンストアでも回転差資金をプラスにすることは難しい。そう、当然転売屋が回転差資金を使って仕入れることなんてのは不可能に近いのだ。転売屋は地道に売上げた利益と本業で稼いだ資金を元に新たな商品を仕入れなければならない。キャッシュフローの面でみたら出ていく現金ばかりでたとえ利益が出ていたとしても手元に残る現金は少なく、こづかい稼ぎのためにやった副業なのにかえって使える現金が少なくなってしまう本末転倒な有様になっていくはずだ。

 

ここまで悪質な転売屋をチェーンストア理論から分析してまとめてみると、転売行為は商品管理面で作業負担が増大、一気に死に筋商品になりうる在庫を持ち、副業なのにかえって使える現金が少なくなってしまうといった全く効率的に売上も利益も取れない採算の合わないビジネスであることが非常に高いと言えるだろう。

 

 

【参考文献】

渥美俊一『21世紀のチェーンストア理論』実務教育出版

渥美俊一『商品構成』実務教育出版

日本リテイリングセンター『新・流通業のための数字に強くなる本』ダイヤモンド社

友野典男行動経済学 経済は「感情」で動いている』光文社

 

『新・流通業のための数字に強くなる本』と『行動経済学 経済は「感情」で動いている』は面白いので是非興味があれば読んでほしい。

 

 

食品小売系のネット記事はだいたいそういうクオリティ

めちゃくちゃ久々にブログ書いたなと思ったら前回更新が3年前でしかも初投稿。さらに読み返したら気持ち悪い文章で早々黒歴史だなと思った。(これもまた黒歴史になるであろう)

 

さて、6月14日の朝にこんな記事が出てきました。

イトーヨーカ堂の閉店が止まらない深刻な理由。イオンと明暗を分けたものは

 

この記事が世に放たれた日、私は仕事が休みの日でその前日夜更かしと労働のあまりにもキツさからお昼12時頃まで爆睡していました。そして、目が覚めた後いつものようにツイッターを開けたらタイムラインとトレンドでこの記事関連に気づいたわけです。

 

そしてこの記事、タイムラインに流れている小売業界趣味者(オタク)からは疑問の声が非常に多かった。主に疑問が多かったのは、

イオンはイトーヨーカ堂と同じ「総合スーパー」に分類されます。しかし、イオンはそれだけではありません。

駐車収容台数が何千台もある「イオンモール」もあります。消費者からすれば、そこが総合スーパーであろうが、ABCマートユニクロが入っているモールであろうが、関係なくそこが買い物をしやすいから利用するわけです。さらにあなたの近所に「まいばすけっと」という生鮮食品も扱うコンビニはありませんか?

あれも”イオン”です(イオングループまいばすけっと株式会社が運営)。そう、イオンは複数の店舗形態を持つ小売企業なのです。

つまり、「イトーヨーカ堂VSイオン連合」という図式が現在のスーパー業界の正しい見方です。 

この部分でしょう。 

 

色々と訂正したい部分が多いのですが、ここは一つに絞って『イトーヨーカ堂VSイオン連合」という図式が現在のスーパー業界の正しい見方』という点だけで考えてみます。

 

まず、イトーヨーカ堂はそもそもセブン&アイHDの総合スーパー事業を担う企業です。というか、セブン&アイHDはイオンと同じく巨大小売業で、総合スーパーに限らず誰もが知っているコンビニ「セブンイレブン」をはじめとして食品スーパーや百貨店など手広く事業を行っています。

 

にもかかわらず、「イトーヨーカ堂VSイオン連合」と表現すると、まるでイトーヨーカ堂は独立系の総合スーパーと受け取れるのでこれが正しい見方なのかというところに疑問が湧くわけです。

 

とはいえ、この記事でセブンイレブンがどうとかそういうのは関係ないのは確かでした。要は、イトーヨーカ堂が大量閉店してる理由はイオン連合との熾烈な争いに負けているからという筆者の結論のために不必要な要素を消してしまっているからです。

 

このような記事を寝ぼけながら読んだ私は「あーまたこういう記事か…」と思ったわけです。

 

この私、大学生の時に食品小売業について特にイオンとセブン&アイHDを中心とした卒論を作っていました。卒論制作時は2014年から2016年の間で色々な文献を漁ると同時に時々刻々と変化する小売業界を知るためにほぼ毎日スマホで食品小売関連のネット記事にかぶりついていました。

 

2013年から2015年のイオンとセブン&アイHDの業績はどちらも増収でしたが、利益面ではイオンは減益、セブン&アイHDは増益でした。この対照的な業績から当時のネット記事はイオンとセブン&アイHDを中心とした経営記事が溢れていたものです。

 

イオンは不動産や金融で利益を出すも、主力の小売では利益を出せずに減益。セブン&アイHDは総合スーパーが不振も主力のコンビニが堅調で増益。とこんな感じの記事を目にする機会が多かったわけです。

 

とまぁ、こういった企業分析記事はかなり使えるものが多く卒論にも取り入れていたのですが、総合スーパー不調、金融不動産などの関連企業好調、コンビニ堅調というのがおそらくpv増加になると踏んで徐々に「ん?」なネット記事が現れるようになってきました。

 

とくに顕著だったのはビジネスジャーナルのネット記事でした。このビジネスジャーナルの記事は本文そのものはごくごく普通の企業分析記事だったのですが、タイトルがまあすごい煽り方でした。

 

イオン、その知られざる危機的状況…主力・スーパー事業、利益額95%減の深刻さ

2017/09/09

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態

2017/10/14

イオン、スーパー事業の利益「ほぼゼロ」が意味する深刻さ

2017/12/01

イオン、偽りの「お客様第一」…スーパーの利益率ほぼ0%、違法広告で国が措置命令

2018/01/12

 

この5ヶ月の間に同じような記事を4本も出したあたりこの手の記事は相当pvが稼げたのでしょう。

 

これ以降、ビジネスジャーナルからはこのような記事は出なくなったのですが、これらの記事のほとんどは外部のライターによる記事でタイトル自体はおそらくビジネスジャーナル側が付けたのでしょう。

 

このような記事が増えたことによってイオンをはじめ食品小売に関する記事ってこんなもんかよ…って感じるようになりました。

 

それでもまあ、読み物としてはおもしろかったわけですが、昨年2020年のある記事には唖然としたことがあります。

 

スーパーの惣菜が売れない!食環境の劇的な変化から?今後は・・・

 

いままでの企業分析記事はいわばマクロ的な観点であったのに対して、こちらは総菜商品に目を向けたミクロ的な記事であり小売業界趣味者からしたらあまり注目はされなさそうでしたが小売従事者らしきツイッタラーからはかなり不評な記事でした。

 

この記事を要約すると、コロナ禍でスーパーの売上が好調であるにも関わらず総菜部門は売上は減少。一方コンビニは売上が芳しくなくコンビニ客とりわけ単身客がスーパーに流れていった。しかし、スーパーの総菜売上は減少しているのでコンビニ単身客を取りこぼしているのではないか。だからもっと商品提供にシビアにならないといけないのではないか?と言った内容でした。

 

要約すると別に間違えたこと言ってるようには見えないが、この結論に至るまでのデータの使い方がどうにも疑問だらけでした。

 

まず、総菜部門の売上が減少しているという根拠に売上構成比のデータを出していました。2月から4月にかけてのスーパー全体の売上のうち総菜部門が占めている割合が10.5%、10.4%、9%と徐々に減っているから総菜部門の売上が減少していると…。

 

これ、変な話なんですよ。確かに2月から4月の全体売上が同じなら構成比下がってる総菜は売上減少してると言うなら理解できますが、実は全体売上は月を追う毎に上がっているのです。実際この記事が参考にした日本スーパーマーケット協会のデータを見ると2月から4月の総菜の売上は909億円、917億円、877億円と別にずっと下がってる訳ではなく、この記事がアップされた後の話になるが6月のデータをみると構成比9.2%で921億円となっていているので総菜の売上が減少しているというには根拠としては弱いはずです。

 

このデータは総菜の売上が落ちていると捉えるより、他の部門の売上が大きくなってそちらの構成比が異常なほど高くなっていると捉えたほうが正しいはずです。というか、記事内にもそう捉えた方が正しいヒントが載っていたのですが…

そこで岡山で20店舗ほど展開しているスーパーの惣菜に従事しているIさんに取材をした。

Iさん曰く、

「売上は好調なんです。ロスも少なく、売上はキープ出来ています」

ちなみに唐揚げ、弁当に関しては本体価格398円が好調と言われる。

内食需要で素材が多く買われている中で総菜のロスが少なく売上キープしてるならそれはコンビニ単身者の需要をしっかり拾っているのではないかと私は思います。

 

あと、話が前後して申し訳ないが5月の総菜売上が下がったのはどう考えてもGW需要がなかったからです。いや、それは総菜に限らずどの部門でもそうでしょと思われるかもしれないが、基本総菜の一品単価・客単価というのは生鮮3部門やグロサリーと比べると低いのですが、GWなど晴れの日需要のときは一気に単価を上げられるのでここが抜けると大きく売上を落とすことになるのです。決して単身者需要を取りこぼしたわけではないはずです。

 

もっと言えば、当時は買いだめもあったのでお米やビール箱、お肉などの高単価商品が大量に売れていたので単価の低い総菜が構成比下がるのは当たり前だったわけです。

 

他にも、総菜キット商品(ミールキット商品)の売れ行きも怪しいので総菜売上が下がっているとの指摘もあったが、多分キット商品って総菜部門じゃなくて各生鮮3部門の商品として登録している企業がほとんどだと思うんですけど…と本当に分かってるのかなあと疑問に思うことばかりでした。

 

 

冒頭の記事でもそうでしたが、なんか微妙なちょっと本質を外してる記事って書いてる人がその手の専門家ってわけではないのが大半でした。冒頭の記事の方は調べると経済アナリストで著作されている本も株の投資術とかで特に小売の専門家というわけではなさそうでした。最後の記事の方はフードジャーナリストで小売・飲食業で商品開発を手掛けているらしいが、営業面についてはちょっと弱そうな記事内容でしたし…

 

食品小売系のネット記事はそういう専門家や詳しい人が書いている訳ではないのでいつも微妙なクオリティの記事になっているなと私は読むたびに思うのです。

 

それでも、小売アナリストは少なからずいるので稀に良記事は見つかりますけどね。だから私はいつもどの人が書いた記事なのか確認するようになりました。

 

それと、ここに挙げてきた記事が悪いとは私はあまり思いません。無料で読める記事には限界がありますし、何よりこれらの記事は一般向け、よく利用する小売が実際どうなっているのか全くわからない人向けであるのは確かなので小売趣味者や関係者ははなから対象ではないわけです。特に有害な記事でもないので…(本当に有害だなと思ったのは某女性誌でわけのわからん理論でスーパーの総菜は悪!家の手料理こそ正義!とよくネットで炎上しなかったなと思う内容のがあった)

 

 

とくにまとめみたいのはないですが、今週は久々に語りたいなとおもったもので駄文ですが適当に書かせていただきました。まあ、読む人あんまいないでしょうけけど。

 

ドーナツ市場の現状

ここ日本でドーナツを主力とした店と言えば「ミスタードーナツ」と言っても過言ではないでしょう。

日本においてミスタードーナツダスキンが運営する店舗ブランドであり、ミスタードーナツを主力としたフードグループ事業の売上高は2017年度で約400億円、チェーン店売上高では約818億円となっている。

ここで国内のドーナツ市場を考えると国内シェアトップのミスタードーナツは1,160店舗を有し、2位のクリスピー・クリーム・ドーナツは2017年時点で47店舗であるのでミスタードーナツの売上そのものがドーナツ市場と考えてよいでしょう。(やけくそ)

そしてこのドーナツ市場、最近はあまり元気ではない状況に置かれている。ミスタードーナツは2014年度の決算以降営業利益が赤字に転落。またセブンイレブン他コンビニ各社が2014年11月からドーナツ市場に参入するものの大苦戦を強いられている。

 

このような状況は度々経済誌でも取り上げられ、何が要因なのかSNSツイッターしか僕は見てないけど…)でも話題のタネとなっている。ドーナツ市場に巨人のコンビニが参入したから元気がないのか、もしくはドーナツという商品そのものに魅力がなくなったのか、分析していきたいと思う。

 

 

 

まずはミスタードーナツを含むフードグループの売上高営業利益を見ていく。

 

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ダスキン決算短信を元に作成

 

一目瞭然だが、2011年度の決算をピークに売上高と営業利益はともにダウントレンドとなっている。しかし、この数字はミスタードーナツ以外の外食店も含まれており(といってもほぼ誤差の範囲)ダスキンフランチャイズ収益の金額であるので、今度はチェーン店売上高を見ていく。

 

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ダスキンHPを元に作成

 

こちらがドーナツ市場規模を表す数字とみてほぼ間違いないが、2013年度に1,112億円あったドーナツ市場も2017年度には818億円にまで落ち込んでいる。

直接的な要因としては店舗数の減少が売上高を下げている。2013年度時点で1,348店舗あったのに対し2017年度では1,160店舗と4年で約190店舗減少している。

もう一つ直接的要因として1店舗あたりの売上高の減少がある。単純にチェーン店売上高を店舗数で割ると2013年度の店舗あたりの1日の売上高は22万6千円であったのに対し、2017年度では19万3千円にまで落ち込んでいる。

営業赤字に転落した原因は、利益確保が難しくなってきた2012年度から2015年度にかけて費用が横ばいもしくは増加しているところにある。閉店や改装による費用増加、人件費や設備の維持費といった固定費用が利益を圧迫したと推測できる。

 

費用が売上と釣り合わず、1店舗あたりの売上高を落としているとなると外的要因は2つ考えられる。

1つは圧倒的なシェアを誇っていたミスタードーナツにライバルが現れたこと、もう1つはドーナツそのものの魅力が感じられないこと。

ミスタードーナツにライバルが現れたとすれば、これはセブンイレブンをはじめとしたコンビニに他ならない。1,000店舗近くあるミスタードーナツに対してセブンイレブンだけでも参入当時は約18,000店舗、コンビニ全体で5万店近い。

無論、コンビニでのドーナツの売上構成比はミスタードーナツと比較にならないほど低いわけであり、そもそもミスタードーナツでドーナツを購入する人とコンビニでドーナツを購入する人が全く同じターゲット層とは考えにくい部分もある。

となると、ドーナツという商品そのものに魅力がないから衰退しているということになるのか。これはあくまでも個人の感想だが、高カロリーで腹が重くなるドーナツをわざわざ購入するのかという疑念がある。が、これはあくまでも個人的な感想であり需要があるから現在でも818億円の市場がある。

そうなると考えられるのがドーナツを選択する人が少なくなったと考えることができる。ミスタードーナツのメインターゲット層を考えると、ファミリー層が中心だと思われる。主婦が朝ごはんもしくはおやつとしてドーナツを買いにミスタードーナツへ行き、家族分のドーナツを購入…といった感じだろう。

厚生労働省平成28年国民生活基礎調査の概要によれば、全世帯のうち、児童がいる世帯は2007年で26%あったのに対して、2016年では23.4%となっている。メインターゲット層が少なくなれば当然売上高にも影響されるはずだ。

一方で、ファミリー層以外にも利用客は多い。例えば、単身女性や学生がそれに当たる。しかし、ファミリー層と比べると客単価は低くなる。更に言えば、この層はむしろコンビニのターゲット層とも言える。

ミスタードーナツの業績悪化理由は、メインターゲット層の低下により売上が取りづらくなり、客単価の低い客のみになってしまったとされる。これが売上高の低下と1店舗あたりの売上高低下に現れている。

 

このような状況からミスタードーナツは新たな業態による店を2016年11月から開始している。それが「ミスタードーナツ トゥゴー」だ。この店舗はテイクアウト専門店であり、一号店は駅構内である。今後も駅や商業施設など利便性の高いところに200店舗を目標に出店予定している。*1

この店舗のターゲット層は既存のミスタードーナツのファミリー層とは違いコンビニのターゲット層を狙っていると考えられる。

想定客単価は500円、初年度月間売上が500万円であるので1日あたりの客数は約330人。

単身女性、ビジネスマンあたりをターゲットにしていると思われるが、一人向けにしては客単価が高いと感じてしまう。しかし、コンセプトはギフト要素をプラスしたテイクアウト店舗であるので、職場の人やママ友にプレゼントということを想定しているのだろう。つまり、ファミリー層ではない客単価の低い層をギフト要素を加えることで客単価アップを図っていると推測できる。

 

  • コンビニ業界の参入

 コンビニ業界がなぜドーナツ市場に参入したかと言えば、淹れたてコーヒーと相性の良い商品であり、潜在的な需要があると見込んだから参入したと思われる。

セブンカフェなどの淹れたてコーヒーは、既存のコーヒー市場とは別の潜在需要を引き出したと言われている。コンビニがコーヒーで成功して、ドーナツで失敗したシンプルな理由(以下の記事は大体この記事を参照している)

セブンイレブンがドーナツ市場に参入した2015年2月期では7億杯(750億円)のコーヒーを売り上げたとされる。仮に18,000店舗が売っていたとすると1日あたり1店舗で約106杯、約11,400円売上げていることになる。

そして、相性の良いドーナツを年間6億個、600億円を目標に導入していくわけだが、どうやら苦戦しているのが現状である。

苦戦している理由の1つは目標が高すぎる点はある。ドーナツの売上目標も1日あたり1店舗で約90個、約9,100円売らなけらばならない。規模的にはセブンカフェの8割程度を見込んでいるが、単純に考えればセブンカフェを購入した8割の人がドーナツも購入してくれると想定していることになる。(まあドーナツのみの購入者も見込んでたとは思うが…)

もう1つの理由は、ドーナツ市場はコーヒー市場と比較すると、小さい上に縮小傾向にあるということだ。

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このデータは「全日本コーヒー協会」 の(日本のコーヒー需給表)を元に作成したものである。

このデータからコーヒーの消費量は概ね上昇傾向であることが伺える。一方で、ドーナツ市場は縮小傾向にあり、コーヒーとドーナツは同じような環境であるとは言えず、潜在需要もコーヒーのようにはいかないとされる。

潜在需要がそこまでないとすれば、今ある市場が主戦場となり、パイの奪い合いとなってしまう。ミスタードーナツのメインターゲット層はファミリー層であったがこのファミリー層が低下しているため、単身女性や学生などの客単価の低い層が相対的に増えることになり、さらにはその層はコンビニのメインターゲット層であるため全面対決になってしまったと捉えることができる。

 

  • 市場縮小の要因まとめ

 まとめるとこうなる

① メインターゲット層であった客単価の高いファミリー層の低下により売上高を取れなくなった

② 相対的に客単価の低い層が増えることになった

③ コンビニの参入で②の客層の奪い合いになった

④ 元々小さい市場であったのに大規模な流通経路を持つコンビニが参入することで結果的に各社とも取り分を小さくしてしまった