へんてこブログ

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ドーナツ市場の現状

ここ日本でドーナツを主力とした店と言えば「ミスタードーナツ」と言っても過言ではないでしょう。

日本においてミスタードーナツダスキンが運営する店舗ブランドであり、ミスタードーナツを主力としたフードグループ事業の売上高は2017年度で約400億円、チェーン店売上高では約818億円となっている。

ここで国内のドーナツ市場を考えると国内シェアトップのミスタードーナツは1,160店舗を有し、2位のクリスピー・クリーム・ドーナツは2017年時点で47店舗であるのでミスタードーナツの売上そのものがドーナツ市場と考えてよいでしょう。(やけくそ)

そしてこのドーナツ市場、最近はあまり元気ではない状況に置かれている。ミスタードーナツは2014年度の決算以降営業利益が赤字に転落。またセブンイレブン他コンビニ各社が2014年11月からドーナツ市場に参入するものの大苦戦を強いられている。

 

このような状況は度々経済誌でも取り上げられ、何が要因なのかSNSツイッターしか僕は見てないけど…)でも話題のタネとなっている。ドーナツ市場に巨人のコンビニが参入したから元気がないのか、もしくはドーナツという商品そのものに魅力がなくなったのか、分析していきたいと思う。

 

 

 

まずはミスタードーナツを含むフードグループの売上高営業利益を見ていく。

 

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ダスキン決算短信を元に作成

 

一目瞭然だが、2011年度の決算をピークに売上高と営業利益はともにダウントレンドとなっている。しかし、この数字はミスタードーナツ以外の外食店も含まれており(といってもほぼ誤差の範囲)ダスキンフランチャイズ収益の金額であるので、今度はチェーン店売上高を見ていく。

 

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ダスキンHPを元に作成

 

こちらがドーナツ市場規模を表す数字とみてほぼ間違いないが、2013年度に1,112億円あったドーナツ市場も2017年度には818億円にまで落ち込んでいる。

直接的な要因としては店舗数の減少が売上高を下げている。2013年度時点で1,348店舗あったのに対し2017年度では1,160店舗と4年で約190店舗減少している。

もう一つ直接的要因として1店舗あたりの売上高の減少がある。単純にチェーン店売上高を店舗数で割ると2013年度の店舗あたりの1日の売上高は22万6千円であったのに対し、2017年度では19万3千円にまで落ち込んでいる。

営業赤字に転落した原因は、利益確保が難しくなってきた2012年度から2015年度にかけて費用が横ばいもしくは増加しているところにある。閉店や改装による費用増加、人件費や設備の維持費といった固定費用が利益を圧迫したと推測できる。

 

費用が売上と釣り合わず、1店舗あたりの売上高を落としているとなると外的要因は2つ考えられる。

1つは圧倒的なシェアを誇っていたミスタードーナツにライバルが現れたこと、もう1つはドーナツそのものの魅力が感じられないこと。

ミスタードーナツにライバルが現れたとすれば、これはセブンイレブンをはじめとしたコンビニに他ならない。1,000店舗近くあるミスタードーナツに対してセブンイレブンだけでも参入当時は約18,000店舗、コンビニ全体で5万店近い。

無論、コンビニでのドーナツの売上構成比はミスタードーナツと比較にならないほど低いわけであり、そもそもミスタードーナツでドーナツを購入する人とコンビニでドーナツを購入する人が全く同じターゲット層とは考えにくい部分もある。

となると、ドーナツという商品そのものに魅力がないから衰退しているということになるのか。これはあくまでも個人の感想だが、高カロリーで腹が重くなるドーナツをわざわざ購入するのかという疑念がある。が、これはあくまでも個人的な感想であり需要があるから現在でも818億円の市場がある。

そうなると考えられるのがドーナツを選択する人が少なくなったと考えることができる。ミスタードーナツのメインターゲット層を考えると、ファミリー層が中心だと思われる。主婦が朝ごはんもしくはおやつとしてドーナツを買いにミスタードーナツへ行き、家族分のドーナツを購入…といった感じだろう。

厚生労働省平成28年国民生活基礎調査の概要によれば、全世帯のうち、児童がいる世帯は2007年で26%あったのに対して、2016年では23.4%となっている。メインターゲット層が少なくなれば当然売上高にも影響されるはずだ。

一方で、ファミリー層以外にも利用客は多い。例えば、単身女性や学生がそれに当たる。しかし、ファミリー層と比べると客単価は低くなる。更に言えば、この層はむしろコンビニのターゲット層とも言える。

ミスタードーナツの業績悪化理由は、メインターゲット層の低下により売上が取りづらくなり、客単価の低い客のみになってしまったとされる。これが売上高の低下と1店舗あたりの売上高低下に現れている。

 

このような状況からミスタードーナツは新たな業態による店を2016年11月から開始している。それが「ミスタードーナツ トゥゴー」だ。この店舗はテイクアウト専門店であり、一号店は駅構内である。今後も駅や商業施設など利便性の高いところに200店舗を目標に出店予定している。*1

この店舗のターゲット層は既存のミスタードーナツのファミリー層とは違いコンビニのターゲット層を狙っていると考えられる。

想定客単価は500円、初年度月間売上が500万円であるので1日あたりの客数は約330人。

単身女性、ビジネスマンあたりをターゲットにしていると思われるが、一人向けにしては客単価が高いと感じてしまう。しかし、コンセプトはギフト要素をプラスしたテイクアウト店舗であるので、職場の人やママ友にプレゼントということを想定しているのだろう。つまり、ファミリー層ではない客単価の低い層をギフト要素を加えることで客単価アップを図っていると推測できる。

 

  • コンビニ業界の参入

 コンビニ業界がなぜドーナツ市場に参入したかと言えば、淹れたてコーヒーと相性の良い商品であり、潜在的な需要があると見込んだから参入したと思われる。

セブンカフェなどの淹れたてコーヒーは、既存のコーヒー市場とは別の潜在需要を引き出したと言われている。コンビニがコーヒーで成功して、ドーナツで失敗したシンプルな理由(以下の記事は大体この記事を参照している)

セブンイレブンがドーナツ市場に参入した2015年2月期では7億杯(750億円)のコーヒーを売り上げたとされる。仮に18,000店舗が売っていたとすると1日あたり1店舗で約106杯、約11,400円売上げていることになる。

そして、相性の良いドーナツを年間6億個、600億円を目標に導入していくわけだが、どうやら苦戦しているのが現状である。

苦戦している理由の1つは目標が高すぎる点はある。ドーナツの売上目標も1日あたり1店舗で約90個、約9,100円売らなけらばならない。規模的にはセブンカフェの8割程度を見込んでいるが、単純に考えればセブンカフェを購入した8割の人がドーナツも購入してくれると想定していることになる。(まあドーナツのみの購入者も見込んでたとは思うが…)

もう1つの理由は、ドーナツ市場はコーヒー市場と比較すると、小さい上に縮小傾向にあるということだ。

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このデータは「全日本コーヒー協会」 の(日本のコーヒー需給表)を元に作成したものである。

このデータからコーヒーの消費量は概ね上昇傾向であることが伺える。一方で、ドーナツ市場は縮小傾向にあり、コーヒーとドーナツは同じような環境であるとは言えず、潜在需要もコーヒーのようにはいかないとされる。

潜在需要がそこまでないとすれば、今ある市場が主戦場となり、パイの奪い合いとなってしまう。ミスタードーナツのメインターゲット層はファミリー層であったがこのファミリー層が低下しているため、単身女性や学生などの客単価の低い層が相対的に増えることになり、さらにはその層はコンビニのメインターゲット層であるため全面対決になってしまったと捉えることができる。

 

  • 市場縮小の要因まとめ

 まとめるとこうなる

① メインターゲット層であった客単価の高いファミリー層の低下により売上高を取れなくなった

② 相対的に客単価の低い層が増えることになった

③ コンビニの参入で②の客層の奪い合いになった

④ 元々小さい市場であったのに大規模な流通経路を持つコンビニが参入することで結果的に各社とも取り分を小さくしてしまった