へんてこブログ

適当に書く予定

食品小売系のネット記事はだいたいそういうクオリティ

めちゃくちゃ久々にブログ書いたなと思ったら前回更新が3年前でしかも初投稿。さらに読み返したら気持ち悪い文章で早々黒歴史だなと思った。(これもまた黒歴史になるであろう)

 

さて、6月14日の朝にこんな記事が出てきました。

イトーヨーカ堂の閉店が止まらない深刻な理由。イオンと明暗を分けたものは

 

この記事が世に放たれた日、私は仕事が休みの日でその前日夜更かしと労働のあまりにもキツさからお昼12時頃まで爆睡していました。そして、目が覚めた後いつものようにツイッターを開けたらタイムラインとトレンドでこの記事関連に気づいたわけです。

 

そしてこの記事、タイムラインに流れている小売業界趣味者(オタク)からは疑問の声が非常に多かった。主に疑問が多かったのは、

イオンはイトーヨーカ堂と同じ「総合スーパー」に分類されます。しかし、イオンはそれだけではありません。

駐車収容台数が何千台もある「イオンモール」もあります。消費者からすれば、そこが総合スーパーであろうが、ABCマートユニクロが入っているモールであろうが、関係なくそこが買い物をしやすいから利用するわけです。さらにあなたの近所に「まいばすけっと」という生鮮食品も扱うコンビニはありませんか?

あれも”イオン”です(イオングループまいばすけっと株式会社が運営)。そう、イオンは複数の店舗形態を持つ小売企業なのです。

つまり、「イトーヨーカ堂VSイオン連合」という図式が現在のスーパー業界の正しい見方です。 

この部分でしょう。 

 

色々と訂正したい部分が多いのですが、ここは一つに絞って『イトーヨーカ堂VSイオン連合」という図式が現在のスーパー業界の正しい見方』という点だけで考えてみます。

 

まず、イトーヨーカ堂はそもそもセブン&アイHDの総合スーパー事業を担う企業です。というか、セブン&アイHDはイオンと同じく巨大小売業で、総合スーパーに限らず誰もが知っているコンビニ「セブンイレブン」をはじめとして食品スーパーや百貨店など手広く事業を行っています。

 

にもかかわらず、「イトーヨーカ堂VSイオン連合」と表現すると、まるでイトーヨーカ堂は独立系の総合スーパーと受け取れるのでこれが正しい見方なのかというところに疑問が湧くわけです。

 

とはいえ、この記事でセブンイレブンがどうとかそういうのは関係ないのは確かでした。要は、イトーヨーカ堂が大量閉店してる理由はイオン連合との熾烈な争いに負けているからという筆者の結論のために不必要な要素を消してしまっているからです。

 

このような記事を寝ぼけながら読んだ私は「あーまたこういう記事か…」と思ったわけです。

 

この私、大学生の時に食品小売業について特にイオンとセブン&アイHDを中心とした卒論を作っていました。卒論制作時は2014年から2016年の間で色々な文献を漁ると同時に時々刻々と変化する小売業界を知るためにほぼ毎日スマホで食品小売関連のネット記事にかぶりついていました。

 

2013年から2015年のイオンとセブン&アイHDの業績はどちらも増収でしたが、利益面ではイオンは減益、セブン&アイHDは増益でした。この対照的な業績から当時のネット記事はイオンとセブン&アイHDを中心とした経営記事が溢れていたものです。

 

イオンは不動産や金融で利益を出すも、主力の小売では利益を出せずに減益。セブン&アイHDは総合スーパーが不振も主力のコンビニが堅調で増益。とこんな感じの記事を目にする機会が多かったわけです。

 

とまぁ、こういった企業分析記事はかなり使えるものが多く卒論にも取り入れていたのですが、総合スーパー不調、金融不動産などの関連企業好調、コンビニ堅調というのがおそらくpv増加になると踏んで徐々に「ん?」なネット記事が現れるようになってきました。

 

とくに顕著だったのはビジネスジャーナルのネット記事でした。このビジネスジャーナルの記事は本文そのものはごくごく普通の企業分析記事だったのですが、タイトルがまあすごい煽り方でした。

 

イオン、その知られざる危機的状況…主力・スーパー事業、利益額95%減の深刻さ

2017/09/09

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態

2017/10/14

イオン、スーパー事業の利益「ほぼゼロ」が意味する深刻さ

2017/12/01

イオン、偽りの「お客様第一」…スーパーの利益率ほぼ0%、違法広告で国が措置命令

2018/01/12

 

この5ヶ月の間に同じような記事を4本も出したあたりこの手の記事は相当pvが稼げたのでしょう。

 

これ以降、ビジネスジャーナルからはこのような記事は出なくなったのですが、これらの記事のほとんどは外部のライターによる記事でタイトル自体はおそらくビジネスジャーナル側が付けたのでしょう。

 

このような記事が増えたことによってイオンをはじめ食品小売に関する記事ってこんなもんかよ…って感じるようになりました。

 

それでもまあ、読み物としてはおもしろかったわけですが、昨年2020年のある記事には唖然としたことがあります。

 

スーパーの惣菜が売れない!食環境の劇的な変化から?今後は・・・

 

いままでの企業分析記事はいわばマクロ的な観点であったのに対して、こちらは総菜商品に目を向けたミクロ的な記事であり小売業界趣味者からしたらあまり注目はされなさそうでしたが小売従事者らしきツイッタラーからはかなり不評な記事でした。

 

この記事を要約すると、コロナ禍でスーパーの売上が好調であるにも関わらず総菜部門は売上は減少。一方コンビニは売上が芳しくなくコンビニ客とりわけ単身客がスーパーに流れていった。しかし、スーパーの総菜売上は減少しているのでコンビニ単身客を取りこぼしているのではないか。だからもっと商品提供にシビアにならないといけないのではないか?と言った内容でした。

 

要約すると別に間違えたこと言ってるようには見えないが、この結論に至るまでのデータの使い方がどうにも疑問だらけでした。

 

まず、総菜部門の売上が減少しているという根拠に売上構成比のデータを出していました。2月から4月にかけてのスーパー全体の売上のうち総菜部門が占めている割合が10.5%、10.4%、9%と徐々に減っているから総菜部門の売上が減少していると…。

 

これ、変な話なんですよ。確かに2月から4月の全体売上が同じなら構成比下がってる総菜は売上減少してると言うなら理解できますが、実は全体売上は月を追う毎に上がっているのです。実際この記事が参考にした日本スーパーマーケット協会のデータを見ると2月から4月の総菜の売上は909億円、917億円、877億円と別にずっと下がってる訳ではなく、この記事がアップされた後の話になるが6月のデータをみると構成比9.2%で921億円となっていているので総菜の売上が減少しているというには根拠としては弱いはずです。

 

このデータは総菜の売上が落ちていると捉えるより、他の部門の売上が大きくなってそちらの構成比が異常なほど高くなっていると捉えたほうが正しいはずです。というか、記事内にもそう捉えた方が正しいヒントが載っていたのですが…

そこで岡山で20店舗ほど展開しているスーパーの惣菜に従事しているIさんに取材をした。

Iさん曰く、

「売上は好調なんです。ロスも少なく、売上はキープ出来ています」

ちなみに唐揚げ、弁当に関しては本体価格398円が好調と言われる。

内食需要で素材が多く買われている中で総菜のロスが少なく売上キープしてるならそれはコンビニ単身者の需要をしっかり拾っているのではないかと私は思います。

 

あと、話が前後して申し訳ないが5月の総菜売上が下がったのはどう考えてもGW需要がなかったからです。いや、それは総菜に限らずどの部門でもそうでしょと思われるかもしれないが、基本総菜の一品単価・客単価というのは生鮮3部門やグロサリーと比べると低いのですが、GWなど晴れの日需要のときは一気に単価を上げられるのでここが抜けると大きく売上を落とすことになるのです。決して単身者需要を取りこぼしたわけではないはずです。

 

もっと言えば、当時は買いだめもあったのでお米やビール箱、お肉などの高単価商品が大量に売れていたので単価の低い総菜が構成比下がるのは当たり前だったわけです。

 

他にも、総菜キット商品(ミールキット商品)の売れ行きも怪しいので総菜売上が下がっているとの指摘もあったが、多分キット商品って総菜部門じゃなくて各生鮮3部門の商品として登録している企業がほとんどだと思うんですけど…と本当に分かってるのかなあと疑問に思うことばかりでした。

 

 

冒頭の記事でもそうでしたが、なんか微妙なちょっと本質を外してる記事って書いてる人がその手の専門家ってわけではないのが大半でした。冒頭の記事の方は調べると経済アナリストで著作されている本も株の投資術とかで特に小売の専門家というわけではなさそうでした。最後の記事の方はフードジャーナリストで小売・飲食業で商品開発を手掛けているらしいが、営業面についてはちょっと弱そうな記事内容でしたし…

 

食品小売系のネット記事はそういう専門家や詳しい人が書いている訳ではないのでいつも微妙なクオリティの記事になっているなと私は読むたびに思うのです。

 

それでも、小売アナリストは少なからずいるので稀に良記事は見つかりますけどね。だから私はいつもどの人が書いた記事なのか確認するようになりました。

 

それと、ここに挙げてきた記事が悪いとは私はあまり思いません。無料で読める記事には限界がありますし、何よりこれらの記事は一般向け、よく利用する小売が実際どうなっているのか全くわからない人向けであるのは確かなので小売趣味者や関係者ははなから対象ではないわけです。特に有害な記事でもないので…(本当に有害だなと思ったのは某女性誌でわけのわからん理論でスーパーの総菜は悪!家の手料理こそ正義!とよくネットで炎上しなかったなと思う内容のがあった)

 

 

とくにまとめみたいのはないですが、今週は久々に語りたいなとおもったもので駄文ですが適当に書かせていただきました。まあ、読む人あんまいないでしょうけけど。